ヒトメボ

サブカル系歴史作家

堀江宏樹

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 数多くの女性から愛されるモテ男っていますよね。黙っていても女性がついてくるイケメンもいれば、常套テクニックを使って同じタイプの女性をたくさん攻略する男性もいます。なかでも、いろんなタイプの女性を自ら口説ける人は、とりわけ〝やり手″って感じがしませんか?歴史上の偉人、坂本龍馬もそんなタイプだったようです。そこで、龍馬の用いた口説きのテクニックについて、歴史エッセイストの堀江宏樹さんにお聞きしました。

お嬢様タイプ「平井加尾」にはギャップで!

 龍馬の初恋の相手とされることの多い、平井加尾の場合はどうだったのでしょうか?

「平井加尾は、土佐において坂本龍馬よりも身分が高く、高嶺の花のお嬢様でした。さらに和歌もたしなむ才色兼備だったそうで、物語ではたびたび龍馬の初恋相手として描かれます。二人は色んなことがあって別の道を歩みますが、加尾のほうも、若い頃に龍馬と復縁できなかったことを「女子一生の痛恨」と記していることなどから、龍馬に強い好意を抱いていたと思います。龍馬は実家の教育もあり、和歌なども得意で、手紙で自分の気持ちを伝えることも大変に上手でした。加尾には、そういうことをやったのでしょうね。ゴツイ龍馬(一説に180㎝以上)が恋の和歌をすらすら詠むなんて、お嬢様な加尾にとってはギャップ萌え要素満載だったはずです」(堀江先生)

 その頃の龍馬にとって、平井加尾は高嶺の花のお嬢様。龍馬は土佐藩にとってはヤンチャな、ちょっとした問題児でもあります。今も昔も、お嬢様は不良っぽい男性に惹かれるということなのかもしれませんね。しかも豪快なイメージがある龍馬が、自分と同じように繊細な恋の歌を詠めてそれを送ったのだとしたら……。

体育会系「千葉さな子」には、ロマンチックに!

 龍馬の江戸遊学時に出会い婚約者として有名な千葉さな子の場合はどうだったのでしょうか?

「道場主の娘で、江戸の千葉道場で共に剣の修行にあけくれた千葉さな子とは、結婚の約束までしていたようです。龍馬は、さな子に自分の着物の袖を切って渡し、『私は旅立ちますが、戻るまでこの袖を私と思ってください』というような、歌舞伎や人形浄瑠璃に由来する方法で結婚の約束をしたといいます。龍馬の剣の強さも魅力だったでしょうが、そんなロマンチックな部分にも心惹かれ、さな子は妻となることを決心したのでしょう」(同)

 照れ臭くて中々できないようなロマンチックなアプローチでも、体育会系のストイックな女性にはかなり効果的なようです。ふだん無骨な剣士に囲まれているだけに、龍馬のちょっとインテリなテクニックは新鮮だったかもしれませんね。

「ちなみにさな子は、これまで『生涯独身のまま、龍馬を待っていた』というのが定説でしたが、近年、龍馬が暗殺された後に別の男性と結婚し、十年ほどで離婚していたという資料が近年見つかりました。つまり、離婚後、過去を偽るような主張を始めたというのが真相のようです」(同)

 過去を偽ってまで「龍馬を待っていた」ということにしたかった。それほど龍馬が若い頃のさな子に与えた印象は強かったのでしょうね。

男を扱うプロ「お元」には、羽振りのよさを!

 龍馬に関連する女性として、重要な会談にも同席したといわれるお元もよく出てきますね。

「お元は長崎の遊郭街・円山の芸者ですが、詳細はよくわかっていません。お元は龍馬のために働きたいと思い、関係をこじらせていた土佐藩の重役・後藤象二郎との料亭での関係修復の場に、龍馬のお供として連れ添っています。龍馬は一流店でも緊張せず、パーッとドンチャン騒ぎをするのが好きだったそうで、そういったところにお元は一目置いたのかもしれませんね」(同)

 商売柄、男性を知り尽くした女性に、まどろっこしいアピールや駆け引きは無用とばかり、ストレートに経済力にものをいわせたということでしょうか。そんな空気を読んだ割り切りの早さが、プロに男っぷりを認められる条件かもしれないですね。

苦労人のひねくれ者「お龍」には、頼りがいと共通点をアピール!

 龍馬の妻として有名なお龍の場合はどうだったのでしょうか?

「お龍は相当なお嬢様でしたが、父親が若くして亡くなると、長女として母や妹たちの面倒を見るため、苦労することになります。そんな彼女に対して親身に世話をやき、働き口である旅館・寺田屋の紹介までもしてくれる男が現れたら、龍馬のことを好きになってしまうのは当然かと思います。どんな強い女性でも、誰かに頼りたくなる時ってあるでしょうからね。ちなみに龍馬がお龍を選んだのは、情熱的なパーソナリティなど自分との類似点があり、共感できた、というのが理由なようです」(同)

 龍馬は名前に同じ「龍」の字があることなど、共通点もアピールしていたそう。自分との類似点に加え、男らしく支えてくれる甲斐性のある姿に、女性(お龍)は安心して身をゆだねられたということでしょう。そのとき女性が困っている状態だったら、効果は更に上がるでしょうね。

 女性の性質や境遇に合わせた様々な口説き方を駆使するやり方は、相手に合わせた交渉術で後に果たす偉業にも通じるのかもしれませんね。男性の話だけではありません。女性の場合も、自分に言い寄ってくる男性の真意を見抜くのは一番大事なこと。

 どうにもモテないという男性は口説き方が一本槍なのかも。多くの女性の心を引きつけた龍馬にならって、相手のタイプや望むものを見極め、心を動かすアプローチをしていきたいものです。

(中津功介/コンセプト21)
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ライター

中津功介

コンセプト21

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