ヒトメボ

中世西洋文化研究家

マダム由美子

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「イイ女」のイメージといえば、ハイヒールを履きこなし、颯爽と歩いている姿。ハイヒールは女性らしさを引き立たせるアイテムのひとつですが、そもそもハイヒールはいつの時代に誕生し、どのように世間に浸透してきたのでしょうか?

「人々がハイヒールを履くようになった背景には、『背が高くスタイルを良く見せたい』、『美脚に見せたい』、『優雅な動きに見せたい』という大きな目的がありました。今では女性の履物として当たり前のように存在していますが、起源をさかのぼると、じつは男性もハイヒールを愛用していたんですよ」

 とは、「ハイヒール・マジック」などの著者で、西洋文化に詳しいエレガンシストのマダム由美子さん。今のようなハイヒールが生まれるまでには、以下のような変遷があったそう。

1.1530年頃

「ハイヒールの原型となるものの最初の登場は、1530年頃のギリシャ。ギリシャ演劇の男優たちは、背を高く見せるために『コトルノス』という、7~8cmくらいの太いヒールがついた靴を履いていました。これは脚の甲や足首あたりも含めた足全体をカバーするタイプの靴で、今で言う『ブーティ』に近い靴です。当初は一部の貴族の間でしか使用されていませんでしたが、徐々に庶民にも広がっていきました」(同)

2.1570年頃

「イタリアのベネツィアでは仮面舞踏会が行われるのですが、そのとき仮装用の『チョピン』という靴が大衆的に流行しました。これは歩くための実用的な靴というよりは、パフォーマンス要素の強いもの。まるで竹馬のように、ヒールが50~60cmもあるものもあったんですよ。この頃から、男性だけでなく女性もヒールを履くようになってきました」(同)

3.1600年以降~

「曲線美が特徴的な今のようなハイヒールの原点となったのが、ルイ14世がブームを起こした『ルイヒール』です。当時のファッションリーダーでもあったルイ14世は、王だけに許される『赤色』のヒールを愛用していました。ルイ14世は非常に美意識が高く、ハイヒールで優雅に歩けることは男女共に教養として必須である、と考えていたんです。その美意識は後世にも代々継がれ、ルイ16世がマリー・アントワネットを花嫁に選んだ理由も、『ハイヒールを履いてバレエを優雅に踊れるから』だったと言われています」(同)

4.1950年以降~

「靴の歴史は衣服の歴史と切り離せない関係にありますが、ハイヒール史において大きな転機となったのは、スカート丈が短くなったことです。これまではドレスの中に隠れていた靴が外に見えるようになったことで、かかとが細いピンヒールのほかブーツなども登場し、ファッションにおいて靴が主役になる時代がやってきました。特に1955年頃、マリリン・モンローとオードリー・ヘップバーンという対極的な2大ハイヒール美人が活躍したことで、ハイヒールは女性の象徴としてますます世間に浸透したのです」(同)

 様々な変遷を遂げてきたハイヒール。最初は男性の履物だったとは意外でしたが、時代を経て、世界中の女性たちの足もとを美しく見せるために活躍してきたんですね。こうした背景を知ると、ハイヒール愛用者にとっては、これまで以上に靴に愛着が湧いてくるかもしれません。

(池田香織/verb)
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ライター

池田香織

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