ヒトメボ

サブカル系歴史作家

堀江宏樹

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読了時間:約4分

 「日本人は恥ずかしがり屋」というのは世界的に有名な話、特に男性。恋愛面だと、女性をエスコートすることがとても苦手なんて言われたりしますよね。それにしても、日本人男性はどうしてシャイなのか、ちょっと気になりませんか? 昔からずっとそうなんでしょうか? 歴史作家の堀江宏樹さんにお話を伺いました。

平安時代まではそうでもなかった!?

「歴史をさかのぼると、江戸期以降、喜怒哀楽を表に出さないことを是とする『サムライ』を理想とする文化が受け継がれたことが関係しているでしょう。じつは、平安時代までの人々の感情表現は非常に激しく、光源氏に至っては、『自分の好きな人が死んだとき、悲しすぎて失神し馬から落ちた』というエピソードが残されているくらいです。しかし、時代が流れ、武士が活躍するようになると状況は一変。『武士は食わねど高楊枝』ということわざにもあるように、苦しい状況でもやせ我慢をして品位を保とうとする武士の姿が美徳とされ、感情をあらわにせず、多くを語らないことをよしとする男性の理想像が出来上がったのです」(堀江さん)

 つまり日本人男性はもともとシャイだったというより、サムライの振る舞いに憧れて、自ら「寡黙な男」になる努力をしていたんですね! さらに、江戸時代ならではのこんな事情にも関係が。

男性は自己主張しても未来を変えられなかった

「当時は士農工商という身分制度があり、男性はその家庭に生まれたときから自分の将来が既に決まっていました。同時に、身分をわきまえて生きれば少なくとも不幸せにはならないというルールがあったのです。一方、女性には結婚で自分の人生を変えられるチャンスがありました。身分の低い女性がいいところの男性と結婚することを指す『玉の輿にのる』という言葉は、八百屋の娘だったお玉さんが徳川家光の側室となり、後に綱吉の母となって出世したことが由来だとされる俗説もあります。

現代でも、お稽古ごとや自分磨きに熱心になるのは男性より圧倒的に女性のほうが多いですよね。そうやって努力次第で未来を変えられる女性とは違い、男性の生き方には士農工商的な性格が受け継がれている部分が大きいのです。自分で未来を切り開くという考え方を重視し、革命を起こしてきた諸外国から見ると、日本人男性の姿は『主張をしない』、『シャイでナイーブ』に映るのかもしれませんね」(同)

 逆に言えば、江戸時代が260年も続いたのは、こうした身分制度のもと安定した社会が築かれていたからでもあります。ルールを重んじ自己主張を控える男性がいなければ、平和な世の中は成り立たなかったのかもしれませんね。

 ところで、当時の女性達は感情を表に出さない男性のことをどう思っていたのでしょう? やはり、時代に合わせて異性に対する好みも変わっていたりするんでしょうか?

感情を表に出さない寡黙な男はモテました!

「喜怒哀楽を表に出さない男性は、ズバリ女性にモテました。江戸時代のモテ男の典型像といえば、歌舞伎で有名な『助六』という男です。ちょいワルなサムライ・助六の周りには何人もの遊女が集まり、みんな寄ってたかって助六の煙管(キセル)に火をつけたがりました。そんな超モテ男の助六ですが、本命の相手『揚巻』にだけは一途でとてもシャイだったよう。その結果、感情を表に出さないことが逆にミステリアスな印象を与え、周囲の女性達はますます『なんだか謎めいていてステキ』と心を奪われていったのです」(同)

 女性がいい意味で勘違いしてくれて、ますますモテてしまうなんて! 現代のシャイボーイからしたら、羨ましい限りかも!?

 それにしても、歴史を探ると日本人の気質の根源が見えてきて、とても興味深いですね。いつか外国人に「日本の男はシャイね!」なんて言われたら、ぜひ今回の説を教えてあげてください!

(池田香織/verb)
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ライター

池田香織

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