ヒトメボ

動物行動学者

竹内久美子

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読了時間:約4分

※本コラムは性を扱ったやや過激な内容となりますので、予めご了承くださいませ。

 彼氏・彼女として付き合っていた頃は頻繁にSEXしていたのに、結婚後しばらく時間が経つとSEXの回数が減った…。最近、こうしたセックスレスに悩むカップルの声をよく耳にしませんか? 一般的には、「女としての魅力がなくなった」「もう若くないから…」とセックスレスの原因をネガティブに捉えがちですが、果たして本当にそれだけが理由なのでしょうか?

「男性にとってのSEXとは、動物行動学的に見ると『自分の精子で彼女の卵を受精させるだけでなく、他の男の精子で彼女の卵が受精してしまうことを防ぐこと』です。そのため、パートナーが他の男と浮気する可能性が高い恋人同士のときは頻繁にSEXするものの、結婚後は目の届く範囲にいるためガードが甘くなり、回数が減る…ということがしばしば起こるのです。結婚後のセックスレスに対し『愛情がなくなった』と悩んでいる人も多いと思いますが、これはいたって自然な変化。本当の原因は、本能的な部分にあったりもするのです」

 と教えてくれたのは、動物行動学者で「遺伝子が解く! 男の指のひみつ」など数多くの性に関する著書を持つ、竹内久美子さん。竹内さんいわく、動物の雄は自分の子孫を残すために高度な進化を遂げてきたのだそう。

「じつは、霊長類の中でも人間のペニスは長さ・太さ共にダントツです。体が大きく巨根そうなゴリラでさえ、実際のペニスの長さは3cm程度しかありません。また、チンパンジーは非常に乱交的な習性を持ち、雌をめぐって激しい精子競争を繰り広げます。そのため、中には一日に50回もSEXした雌もいると言われているほど。頻繁にSEXする上で長すぎるペニスは邪魔になるので、チンパンジーのペニスは8cm程度の長さにとどまっています。人間はというと、民族や個人によって差はありますが13cm程度が平均です。

 そして人間のペニスが他の動物と決定的に異なるのは、先端に返しがある独特な形をしているということ。男性はピストン運動の際にこの先端の返しを使って、自分より前にパートナーに射精した男性の精子をかき出し、その上で新たな自分の精子を送り込んでいるのです。他の動物のように乱交的ではない人間は、何度もSEXをして精子を送り込むより、長さと太さと形を女性器にピタリとはめ、時間をかけてピストンすることで前の男の精子を確実に取り除くよう、ペニスの形が進化したのです」(竹内さん)

 男性器の進化の裏側には、こんなに合理的な理由があったなんて…! 子孫繁栄のためとはいえ、これは驚きですよね。

 でも、男性が「精子競争に勝つためにピストン運動で前の男の精子をかき出す」ということは、極端な話、かき出しが完了したらその後SEXしなくてもOKってこと…?

「かき出しは1回行ったら完了というわけではありません。ある程度の期間が経ったら、古くなった自分の精子もかき出す必要があるからです。つまり男性は、他人の精子だけでなく、自分自身の精子とも戦っているということですね。また、古い精子を完璧にかき出すには、およそ50~100回のピストン運動が必要になるとされています。前の男性の精子や元気のなくなった自分の精子が完全に女性の体からなくなるまでのことは、単純にSEXした回数や時間の長さだけでは計れないのです」(同)

 となると、やはり肝心なのは、冒頭に述べた「パートナーの女性が目の届く範囲にいたかどうか」。妻が自分の知らないところで別の男性と関係を持った可能性もあるとすれば、夫としてはオチオチしている場合じゃないですもんね。

「逆に言えば、結婚後セックスレスに悩む夫婦は、あえて顔を会わせない一定の期間を設けるといいと思います。夫にとって安心できない環境を意図的につくることで、不安を感じた男性の生殖本能が刺激されるからです。よく言う『男性は嫉妬するとSEXが荒々しくなる』というのも、こうした動物的本能が関係しているからなんですよ」(同)

 結婚後にSEXが減るのは、ある意味男性がすっかり安心していることの証明なのかも。「愛されていないのでは…」と悩むばかりでなく、こんな視点から考えてみるのもアリな気がしませんか?

(池田香織/verb)
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ライター

池田香織

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